クラシック音楽の歴史について

音楽の歴史は、明確にはいつの発祥であるかということが言えるものではありません。

それは地球で発せられた何かの単なる音が音高を持ち、音色を持ち、リズムを持ち、意識して「音楽」として成立した時点を明確にできないからです。

ただし記録された音楽=楽譜などを元に、私たちは音楽の歴史や推移を理解することができます。これまで過去の音楽家たちが記録してきた音楽を時系列に見ることで、その歴史に触れてみましょう。

 

1.ルネサンス音楽

ルネサンス音楽と区分されるものは15世紀から16世紀の美術でいうルネサンス期に作られた音楽になります。

グレゴリオ聖歌の流れを汲み、この頃も音楽の中心は声楽曲・宗教曲でした。特に和音=ハーモニーが発達してきており、3度・6度の和音などを使用した音楽も増えてきます。

初期にはギヨーム・デュファイ(現在のベルギー出身、以下同)という作曲家が、アルス・ノヴァやトレチェント音楽の要素を統合したような音楽を生み出し、様々なモテット、ミサ曲を世に残しました。

モテット、ミサ曲はいずれも宗教音楽ですが、彼はシャンソンやロンドーなどの世俗的な作品も残した点が後の作曲家にも影響しています。

さらにルネサンス音楽中期にはジョスカン・デ・プレ(フランス)らが宗教音楽、世俗音楽いずれも発達させた音楽を生みました。

後期にはクラウディオ・モンテヴェルディ(イタリア)らが世俗音楽の新しい形を生み出し、次のバロック時代への橋渡しを担いました。

 

<代表曲>
「祝福された聖処女」/ジョスカン・デ・プレ
「聖母マリアの夕べの祈り」/モンテヴェルディ

 

2.バロック音楽

バロック音楽と区分されるものは17世紀から18世紀の建築・美術でいうバロック期(様式)に作られた音楽になります。

ルネサンス音楽が対位法という、2つかそれ以上の旋律をお互い引き立てながら進行する技法で作られたものが多い中、バロック音楽では新しい作曲法をもとに音楽を作る者が現れました。

特に17世紀後半になるとジャン=バティスト・リュリ(イタリア)らによるバレエなどの音楽が多く作られ、またオルガン等の発達によって鍵盤楽器による音楽も組曲という形で優秀な作品が残されています。

そして18世紀には現代でも有名な作曲が多数出てきます。

この頃の多くの作曲家はルネサンス音楽時代のモンテヴェルディのように次代的な音楽の模索を進めています。

ですが、ヨハン・セバスティアン・バッハ(ドイツ)はルネサンス音楽の象徴たる対位法を鍵盤楽器や宗教音楽に多数取り入れ、逆にバレエや牧歌劇の音楽は作っていませんでした。

その意味で彼はバロック音楽時代の最重要作曲家というよりは、バロック音楽までの時代の作曲法を完成させた作曲家と言えるでしょう。

 

<代表曲>
「パッヘルベルのカノン」/パッヘルベル
「ラ・フォリア」/コレッリ
「和声と創意への試み」/ヴィヴァルディ

 

3.古典派音楽

古典派音楽と区分されるものは1730年代から1810年代の時期の音楽になります。

音楽を理論的に完成させた時代と言え、特に和声法が確立したことがこの時代のもっとも重大な出来事でありました。

これまでの和声=ハーモニーは「たまたま」その一部分で成立していた音楽もありましたが、古典派音楽では和声も、そして非和声音に至るまでが理論の一部として確固たるものと理解されるようになりました。

さらに楽器の発達に伴い、交響曲や協奏曲、ピアノや弦楽のための音楽が多く作られることになり、同時に管楽器の発達も促されるようになりました。

宗教音楽、世俗音楽共に単体で歌われることの多かった声楽も、オーケストラなどと共に奏されるオペラとして今日の形に近くなりました。

特にヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(オーストリア)やルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(ドイツ)といった、多くの人が知る作曲家もこの時代に生まれ優秀な作品を残しています。

モーツァルトは父と旅をしながら自身の演奏会や作品発表会を重ねる傍ら、各地のバロック音楽から古典派音楽に移行していった様々な音楽を集約しさらに自身の音楽に反映させました。

ベートーヴェンはモーツァルトらが豊かにした音楽にさらに厳格な音楽理論を以って作品を作り続け、その様式が以後の作曲家たちに影響を及ぼすことになります。

 

<代表曲>
「交響曲第94番『驚愕』」/ ハイドン
「ピアノソナタ第11番『トルコ行進曲付き』」/モーツァルト
「交響曲第5番(運命)」/ ベートーヴェン

 

4.ロマン派音楽

ロマン派音楽と区分されるものは1800年代から1900年代の文学・美術でいうロマン主義運動に関連する時期に作られた音楽になります。

上述の通り「ロマン主義運動」に端を発した言葉であるため、必ずしもロマンチックな音楽ばかりというわけではありません。

ロマン派音楽の時代は古典派音楽のベートーヴェンらの作品を土台に、さらに和声書法を磨き、半音階なども駆使した音楽を用いることで奥行きや厚みを音楽に求める作品が多くなります。

同時に調性がしっかりし、音楽のカラーと言えるものが明確になりました。

さらに題名の付け方や音楽の題材とも言えるところまで思想が及ぶようになり、音楽を批評する者たちの活動も活発になってくる時期と言えます。(絶対音楽と標題音楽)

音楽そのものは、様々な特徴を持つ作曲家が豊富にいたことでその作品も華々しく生き生きした作品が多いように感じられます。

 

<代表曲>
「歌曲集:美しき水車小屋の娘」/ シューベルト
「英雄ポロネーズ」/ショパン
「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」/リヒャルト・シュトラウス

 

5.近・現代音楽

近代音楽と区分されるものは20世紀から第二次世界大戦の頃に作られた音楽、現代音楽と区分されるものはそれ以降の音楽の中でクラシック音楽の流れにある音楽になります。

ロマン派音楽の終末期には調性から脱却する試みも行われ、近代音楽の時代のドイツではこの流れから無調音楽が発生することになります。

さらに1オクターブの中の1音ずつを平均して使用することで音楽の平衡性を表そうとした十二音技法などが登場することになりました。

同時に各地の音楽の独自性を保とうと、フランス6人組、ロシアの国民楽派というような作曲家の集団も登場してこれまでより民族色の強い音楽が認められていきます。

現代音楽では、近代音楽の中でも特に無調や不協和音、コンピュータなどを用いた音の変質などが研究・推進され、さらに哲学的・科学的なアプローチで音楽を表現する方法も多く行われています。

このような作曲法は、実際に音になっていても聴衆にはメロディ、もしくはハーモニーとして理解できる範疇を大きく超えてしまうことがあり「現代音楽は難解すぎる」として批判されることもあります。

 

<代表曲>
「春の祭典」/ストラヴィンスキー
「ルーマニア民族舞曲」/バルトーク
「4分33秒」/ケージ

 

まとめ

いかがでしょうか。

西洋音楽の歴史は時系列で知ることでその流れが見えるようになり、音楽や作曲家たちをより近く感じられるようになります。それぞれの作品が生まれた背景と重ねながら、今度は楽曲を聴いてみてください。

まだまだご紹介できていない楽曲がたくさんありますが、ぜひ興味のある時代の音楽があれば音源を聴いてみるきっかけにしてもらえたらと思います。

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